初版700部
2019年:Jiazazhi Press発行
About the book
本作「Combing for Ice and Jade」は著者の香港人写真家カート・トンによる彼の乳母に対するラブレターです。トンの乳母は"自梳女"という、多大な代償を払いながらも自身の権利を得るフェミニズムの初期の形態でもあった立場を貫いた女性でした。
カート・トンは7年近くの時間をかけて、この乳母と共に作品を作り上げました。乳母は、長い人生のなかで、自身の写真はたった8枚しか持っていませんでした(表紙に8つの四角がありますが、これは8枚の証明写真を暗喩しています)。
本書は彼女の特異な人生を探る1冊になっています。
彼女の物語は、ページをめくっていくと順々に明らかになっています。
乳母として関わったトン家の家族写真、彼女の親戚の家から見つかった写真、新しく取り下ろした写真、墨を使った作品、過去60年で中国で出版された女性に関する雑誌などが束ねられています。
とても丁寧に編集され、デリケートな作りで彼女の人生を多角的に捉えた1冊になっています。個人の人生から中国、香港の歴史も見えてきます。
*自梳女... 一生独身を通すと宣言した女性のことです。19世紀の後半~20世紀はじめに、順徳や南海といった特に中国南部で盛んだった風習。未婚の女性は髪を長くしてお下げに結び、結婚前に結いあげたが、自梳女は自分で髪を結いあげた。『梳』(シュ)は梳くというほかに、髪を結うという意味もある。
カート・トン(唐景鋒)
1977年、香港生まれ。13歳でイギリスに渡る。現在、香港を拠点にしている。
写真家のキャリアのはじめは、ドキュメンタリーやフォトジャーナリズムに携わっていた。徐々に自身の家族の歴史に注目し、祖父や両親、乳母といった家族の個人の歴史にフォーカスした作品作りを始めた。「Combing for Ice and Jade」は2017年連州写真祭(中国)でPunctum Awardを受賞、2018年にアルル国際写真祭でPhoto Folio Awardを受賞した。
Combing for Ice and Jade is a love note from Kurt Tong to his nanny, who was one of the last remaining ‘self combed’ women left in China. An early form of Feminism, the comb up ceremony granted women great autonomy at a great cost.
Kurt Tong has worked closely with his nanny over a period of nearly 7 years. Having only 8 photographs of herself, the book is an exploration of her extraordinary life. Her story is slowly revealed through the book, combined with Kurt’s family archive, found photographs from her extended families, new photographs, Chinese ink works and women’s magazines from China that spanned 6 decades.
Artist Info
Born in Hong Kong in 1977, Kurt Tong left to UK when he was 13 years old. Currently he bases in Hong Kong. In his early career as a photographer, he was good at taking documentary and photojournalism. Gradually, he turns attention to his own family history. His work concentrates on individuals, like his grandfather, his parents and his nanny. Combing for Ice and Jade won Punctum Award in Lianzhou Foto in 2017 and Photo Folio Award in Les Rencontres d’Arles in 2018.